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受給世代のマネープラン<第8回>

<第8回>自分や家族の介護に備える

我が国の介護保険法は平成9年12月に法律ができ、平成12年4月から制度が施行されました。我が国の制度は、世界でも例を見ない充実した制度といわれています。

Ⅰ.介護保険のしくみ

介護保険制度は、40歳以上の人全員を被保険者(保険加入者)とした市区町村が運営する社会保険制度です。 被保険者になると保険料を納め、介護や支援が必要と認定されたときに、費用の一部(所得に応じて1割〜3割)を支払って、介護サービス介護予防サービスを利用できます。 介護保険制度は、従来の市区町村が利用できるサービスなどを一方的に定めるしくみとは異なり、利用者が直接介護サービス事業者と契約をしてサービスを選択できる利用者の立場にたった制度であることが大きな特徴です。また、民間企業や市民参加の非営利組織など多様な事業者の参入が可能であることも特色の一つです。

STEP1 保険料を支払う人(被保険者)

介護保険制度では、被保険者は65歳以上の第1号被保険者と40歳以上65歳未満の医療保険に加入されている第2号被保険者に区分されています。
第1号被保険者の保険料は、各市区町村によって算出した基準額に、課税額や収入等による所得段階別の割合を掛けて計算されます。保険料は3年ごとに見直されることになっています。自分の地域の保険料については、各市区町村の窓口に問い合わせてください。

所得段階※1 対象者※2 保険料※3
第1段階 ・ 生活保護受給者
・ 市区町村民税世帯全員非課税、かつ、本人が老齢福祉年金受給者
・ 市区町村民税世帯全員非課税、かつ、課税年金収入額と合計所得金額の合計が年80万円以下である者
基準額 × 0.3
第2段階
・ 市区町村民税世帯全員非課税であり、かつ、課税年金収入額と合計所得金額の合計が年80万円超120万円以下である者
基準額 × 0.5
第3段階 市区町村民税世帯全員非課税であり、かつ、課税年金収入額と合計所得金額の合計が年120万円超である者 基準額 × 0.7
第4段階 市区町村民税本人非課税、かつ、課税年金収入額と合計所得金額の合計が年80万円以下である者 基準額 × 0.9
第5段階※2 市区町村民税本人非課税、かつ、課税年金収入額と合計所得金額の合計が年80万円超である者 基準額 × 1
第6段階※2 市区町村民税本人課税(被保険者本人の合計所得金額が120万円未満) 基準額 × 1.2

※1 地域の実情に合わせて、市区町村ごとに7段階以上の所得段階を定めることも可能です。

※2 第5段階以上の所得区分の区切りの金額は、市区町村ごとに設定されます。

※3 基準額に乗じる所得段階ごとの「割合」は、市区町村ごとに設定されます。上の表中に入っている数値は標準割合として厚生労働省により示されている数値です。


65歳以上の人の介護保険料の支払方法は、老齢(退職)年金・障害年金・遺族年金が年額18万円以上の人は、支払われる年金からの天引きとなります(特別徴収といいます)。老齢(退職)年金・障害年金・遺族年金が年額18万円未満の人は、市区町村から送られてくる納付書によって、金融機関窓口やコンビニエンスストアなどで支払う方法や、口座振替により口座より引き落として支払う方法があります(普通徴収といいます)。
第2号被保険者の保険料は、加入している医療保険制度(国民健康保険、健康保険、共済組合など)の保険料と合わせて徴収されます。なお、サラリーマンの配偶者など医療保険の被扶養者の保険料は、原則として各健康保険の被保険者がみんなで負担することになっていますので、個別に保険料を納める必要はありません。

STEP2 サービスをうけることができる人(受給条件)

第1号被保険者は、原因を問わず要介護状態・要支援状態のときにサービスをうけることができます。第2号被保険者は、要介護状態・要支援状態となる原因が脳卒中、初老期認知症など老化に起因する特定の疾病(末期がんを含む)である場合にサービスをうけることができます。したがって、老化に起因しないたとえば事故などのケガによって介護が必要な状態となった場合は、サービスを利用できません。

Ⅱ.給付をうけるまでの流れ

介護保険のサービスを利用するには、まず市区町村から介護認定をうけることが必要です。相談から認定までの流れは、以下のとおりです。なお、認定の判定に不服があるときは、まずは市区町村の介護保険課認定係に相談することになっています。納得できないときは、判定の通知をうけとった日の翌日から起算して60日以内に各地域にある「介護保険審査会」に申し立てを行い、審査請求をすることができます。

STEP1 相談から介護認定までの流れ

市区町村の福祉の窓口に相談します。電話でもかまいません。

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本人または家族などが市区町村に要介護認定の申請をします。

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訪問調査と第1次判定
市区町村の職員または市区町村から委託された介護支援専門員などがご自宅を訪問し、調査をします。
この調査結果をもとにコンピュータによる1次判定が行われます。

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要介護認定の申請書に記載した主治医が
医学的見地から意見書を作成し、提出します。

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介護認定審査会による第2次判定
1次判定の結果と主治医の意見書などをもとに、保健、医療、福祉の専門家により、認定が行われます。
認定は、非該当、要支援(1~2)、要介護(1~5)のいずれに該当するか、認定結果が通知されます。

認定の結果と要介護・要支援認定の種類

要介護度 認定の目安
非該当 一般
特定高齢者
非該当の認定をうけた人でも、生活機能評価をうけて「要支援・要介護になるおそれがある」と認められれば「特定高齢者」と認定され、市区町村の地域包括センターなどで、「介護予防サービス」をうけることができます。
要支援1 生活機能の一部に若干の低下が認められ、介護予防サービスを提供すれば改善が見込まれる。
要支援2 生活機能の一部に低下が認められ、介護予防サービスを提供すれば改善が見込まれる。
要介護1 身の回りの世話に見守りや手助けが必要。立ち上がり・歩行等で支えが必要。
要介護2 身の回りの世話全般に見守りや手助けが必要。立ち上がり・歩行等で支えが必要。排せつや食事で見守りや手助けが必要。
要介護3 身の回りの世話や立ち上がりが一人ではできない。排せつ等で全般的な介助が必要。
要介護4 日常生活を営む機能がかなり低下しており、全面的な介助が必要な場合が多い。問題行動や理解低下もあり立ち上がりや歩行などがほとんどできない。
要介護5 日常生活を営む機能が著しく低下しており、全面的な介助が必要。多くの問題行動や全般的な理解低下もあり意思の疎通が困難。

STEP2 認定をうけた後の流れ

認定をうけたあとは、在宅での生活を望む場合と施設等に入居される生活を希望する場合で、認定をうけた後の流れが分かれます。


(1)在宅での生活を望む場合
要介護1~5の認定をうけた人が、居宅サービスの利用を希望する場合は、市区町村にある居宅介護支援事業所の名簿の中から、自分が希望する居宅介護支援事業所を選んで、その事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談し、ケアプラン(居宅サービス計画)を作成してもらいます。
ケアマネジャーは、利用者の状況や抱えている問題を、利用者や家族と一緒に考え相談しながら、介護に関する専門知識と経験を生かして、利用者に合ったケアプランを作成します。そのほか、各サービス提供事業者への利用申込み、利用者負担額の計算、要介護認定申請の代行なども行います。
要支援1・2の認定をうけた方が、居宅サービスの利用を希望する場合は、地域包括支援センターへ相談・依頼を行います。地域包括支援センターでは、保健師等が中心となって、介護予防のためのケアプランを作成します。地域包括支援センターは、ケアプランの作成の他、高齢者やその家族に対する相談、高齢者の虐待防止等の権利擁護などを行います。
ケアプランの作成費用は、介護保険で負担しますので、利用者の負担はありません。サービスの利用にあたっては、利用者が直接サービス事業者と契約をします。
(2)施設等に入居する生活を希望する場合
要介護者が施設等に入居される生活を希望する場合は、直接施設等に申し込みます。施設には、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護があります。

Ⅲ.介護サービス

保険給付の内容については、要介護度に応じて次のようになっています。


(1)要支援者:在宅サービス(介護予防サービス)と地域密着型サービス(地域密着型介護予防サービス)の「介護予防給付」をうけることができます。
(2)要介護者:在宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの「介護給付」をうけることができます。
(3)その他:要介護認定が「非該当」の人でも、身体の状況によっては「介護予防ケアマネジメント」をうけて、「介護予防・生活支援サービス事業」のサービスがうけれられます。


それぞれのサービスについて主なものをみていきましょう。

STEP1 在宅サービス

サービスの名称 サービスの内容 利用対象者
訪問介護サービス
(ホームヘルプサービス)
介護予防の場合は、ヘルパーが自宅に来て利用者と協働して家事の援助等を行う。 要支援
ヘルパーが自宅に来て、日常生活の介護や家事の援助をする。 要介護
訪問入浴介護サービス 移動入浴車などで訪問し、入浴の介助を行う。 要支援・要介護
訪問看護 看護師や保健師が自宅に来て、看護を行う。行うには医師の指示書が必要。 要支援・要介護
訪問リハビリテーション 病状が安定してから理学療法士・作業療法士が自宅に来て、機能回復訓練をうけることができる。 要支援・要介護
居宅療養管理指導 通院が困難な人に対して医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士が家庭を訪問し、療養上の管理指導を行う。 要支援・要介護
通所介護(デイサービス) デイサービスセンターに行って、生活指導・日常生活訓練・食事・入浴・機能訓練などのサービスを日帰りでうけることができる。 要支援・要介護
通所リハビリテーション 介護老人保健施設や病院、診療所に行って、リハビリテーションの専門家による機能回復訓練をうけることができる。 要支援・要介護
短期入所生活介護
(ショートステイ)
特別養護老人ホームなどの施設で介護の必要な人を30日以内の期間、介護や日常生活の介護などの世話をうけることができる。 要支援・要介護
短期入所療養介護
(ショートステイ)
医学的管理が必要な人を30日までの短期間、老人保健施設や医療施設などで介護をうける。 要支援・要介護
特定施設入所者生活介護 有料老人ホームなどに入所している人に施設が提供する介護サービスをいう。 要支援・要介護
福祉用具貸与・購入費の支給 車椅子や特別寝台を貸与されたり、貸与になじまない腰掛便座などの購入費が支給される。 要支援・要介護
住宅改修費 車手すりの取り付けや段差の解消などの住宅改修費が支給される。 要支援・要介護

STEP2 施設サービス

施設サービスは要介護の人がうけることができるサービスで、要支援の方はうけることができません。

施設サービスの種類 施設サービスの内容
特別養護老人ホーム
(介護老人福祉施設)
自宅では介護が困難な場合で、食事や排せつなどで日常介護が必要な人が入所します。
介護老人保健施設 病状が安定した人で、リハビリテーションや看護、介護に重点が置かれたケアが必要な場合に入所します。
介護療養型医療施設
(療養病床)
長期の療養が必要な人で、医学的な管理が必要な人のための施設です。療養上の管理、看護、医学的な管理下での介護・機能訓練・その他必要な医療などのサービスをうけることができます。
介護医療院 長期の療養が必要な人が、医療的ケアと介護を一体的にうけることができます。

STEP3 地域密着型サービス(地域密着型介護予防サービス)

要支援・要介護の人が住み慣れた身近な生活範囲ごとに、サービスの拠点をつくり、地域の実情に合わせたサービスを行います。

サービスの項目 サービスの内容
認知症対応型通所介護 認知症のお年寄りにデイサービスセンターなどに通ってもらい、日常生活の介助や機能訓練を行う。
グループホーム
(認知症対応型共同生活介護)
認知症のお年寄りが少人数で共同生活しながら、介護スタッフによる食事、入浴、排せつなどの介助をうける。
小規模多機能型居宅介護 在宅または通所で、職員による訪問サービスや宿泊サービスを組み合わせて必要なサービスを行う。(要介護者のみ)
夜間対応型訪問介護 早朝や夜間に介護員が定期的に巡回し、短時間の介助や安否確認を行う。(要介護者のみ)
地域密着型介護老人福祉 施設入所者生活介護 定員30名未満の小規模な特別養護老人ホームに入所している人は、施設で食事、入浴、排せつの介助等のサービスや機能訓練をうけることができる。(要介護者のみ)
地域密着型特定施設入所者生活介護 定員30名未満の小規模な有料老人ホームなどに入所している人は、施設で食事、入浴、排せつの介助等のサービスや機能訓練をうけることができる。(要介護者のみ)

Ⅳ.介護のための必要資金と備え

STEP1 在宅サービスの利用者負担額

在宅サービスの支給限度額は、要介護状態により単位数で決められています。うけるサービスにより若干異なりますが、1単位の単価は約10円です。したがって、単位数に10円を掛けた数字が支給限度額となり、この範囲で利用者負担額は1割〜3割、残りは介護保険で給付されます。限度額を超えた部分は、全額利用者負担となりますので注意してください。また、デイサービスの食費(食材料費+調理費相当)、ショートステイの食費・居住費(室料+光熱費相当)は、全額が利用者負担となります。
要介護度が同じでも、うけたいサービスは、本人の希望や状態、家族の状況により、一人ひとり異なります。ケアプランには、サービスごとの単位数、保険給付額、利用者負担額が記載されますので、この時点で、支給限度額をオーバーしていないかをチェックすることができます。

要介護度 1ヵ月あたりの支給限度単位 1ヵ月あたりの支給限度単位 利用できるサービス
要支援1 5,032単位 約50,000円 介護予防サービス
地域密着型介護予防サービス
要支援2 10,531単位 約110,000円
要介護1 16,765単位 約170,000円 在宅サービス、地域密着型サービス
(施設で提供されるサービスは除く)
要支援2 19,705単位 約200,000円
要支援3 27,048単位 約270,000円
要支援4 30,938単位 約310,000円
要支援5 36,217単位 約360,000円

STEP2 施設サービスの利用者負担額

施設サービスの利用者負担額は、施設サービス(食費・居住費等を除く保険対象サービス費)の費用の1割〜3割で、残りは介護保険で給付されます。
また、施設サービスでは、1割〜3割の負担のほかに、次の全額が利用者負担となります。

(1)食費:食材料費+調理費相当
(2)居住費:室料+光熱水費相当、多床室では光熱水費相当
(3)日常生活費:理美容代、施設サービスで提要される便宜のうち、日常生活でも通常必要となる費用で、利用者負担が適当と認められるもの
(4)利用者の選定による特別なサービスの提供:特別な居室、特別な食事等


※なお、1ヵ月の利用者負担額が一定額を超えて高額になる場合は、超えた分が払い戻されます(高額介護(予防)サービス費)。また、12ヵ月の介護保険の利用者負担額と医療保険または後期高齢者医療の窓口負担額(それぞれ高額療養費または高額介護(予防)サービス費が支給された場合はそれを引いた額)を合計した額が一定額を超えて高額になる場合にも、超えた分が払い戻されます(高額介護・高額医療合算療養費)。


介護保険制度は公的な社会保険制度です。介護が必要となった場合はまず市区町村窓口を通して、ケアマネジャーに相談し、介護保険を上手に利用するとよいでしょう。昼間家族がいない家庭でも、ホームヘルパーなどを活用することにより、居宅介護が可能となります。また、施設を利用することも可能な場合があります。現在、居宅介護で家族に過重な負担がかかっている場合などは、一人で悩まずケアマネジャーに相談するとよいでしょう。